なんかこの作品黄変が早いような…!?
レジンの黄変を抑える方法あるのかな?
黄変の原因と対策を解説します!
レジンを扱う上で避けては通れない黄変。
久しぶりにレジン作品を見たら、黄変してすっかり印象が変わってしまっていた、なんてご経験のある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
今回は二液性レジンの黄変原因と対策について、じっくり掘り下げて解説していきます。
・レジン作家さん
・レジンを扱うアルコールインクアート作家さん
・黄変しにくい作品を作りたい方
・作品を長く楽しんでもらいたい方
レジンの黄変について
冒頭にも書きましたが、レジンの経年黄変は避けて通れないものです。
ですが、原因を知って正しく対策をすれば、黄変しにくくしたり目立ちにくくすることはできます。
早速、まずは原因の方から見ていきましょう。
エポキシレジンの黄変原因
黄変=紫外線が原因と思われがちかと思いますが、実は硬化前の方の要因も多いです。
エポキシレジンの主な黄変原因は次の5つ。
エポキシレジンの主な黄変原因5選
①硬化剤の酸化
②シリコンオイル・水性絵の具の使用
③白色顔料の使用
④オーバートーチ(過加熱)
⑤紫外線
詳しく解説していきます。
硬化剤の酸化
写真のように、レジンの硬化剤は黄変します。
これは混合前の硬化剤が空気に触れて酸化することで起こります。
黄変した硬化剤を使用した作品は、その後の黄変スピードも速くなります。
新品で未開封の硬化剤でも黄変が進んでいることがまれにあるのですが、これは容器の中が真空状態ではないことや、容器のプラスチックがわずかに酸素を透過しているためです。
ちなみに私がよくオススメしているフローレスレジンでも硬化剤が開封前からオレンジ味がかっていることがありますが、
メーカーさん曰くこれは劣化とは別物の耐UV成分によるものだそうで、混合後は透明になるのでご安心くださいね。
シリコンオイル・水性絵の具の使用
添加すると独特なセルを形成するシリコンオイルは、黄変を早めることがあります。
オイルが部分的な未硬化を引き起こしやすくするためです。
またアクリル絵の具などの水性絵の具をレジンに混ぜると、混合時にレジンと水分が結びついてしまい、黄変・劣化を早める原因になります。
白色顔料の使用
白色顔料(酸化チタンが含まれるタイプ=チタニウムホワイトなど)との混合も化学反応を引き起こし黄変を早めることがあります。
オーシャンアートの白波部分がすぐに黄変した経験のある方や、アルコールインクアートでホワイトを使った作品のコーティングがいつもより早く黄変すると感じられている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
特にホワイト顔料を入れてから炙りすぎると急速に黄変してしまいます。
これについてはレジンに混ぜこまず、ホワイトを使ったアートとレジンが接しているだけでも黄変が速まる実感があります。
ジェッソ、アルコールインクのホワイト、アクリルインク、アクリル絵具のホワイトでも基本的にチタニウムホワイトが使われているため同様です。(絵具には他の顔料の白もありますが)
オーバートーチ(過加熱)
レジンを掛けた後、気泡を消すためにあぶり過ぎる=オーバートーチをすると黄変します。
オーバートーチをどのように判断するかというと、煙が出たり、アート面に焦げ跡がついたり、硬化後では表面にくぼみや波打ちなどが見られるような状態を指します。
加熱に関連して、エポキシレジンは一般的に硬化速度が速い(硬化熱が上がりやすい)ほど、黄変しやすいといわれます。
レジンを加温しすぎた場合も硬化速度が速まるため、黄変をはやめるおそれがあります。
紫外線
硬化後のレジンは紫外線で劣化し、黄変します。
これについては黄変実験を独自にして下さっている方も多く、きっとみなさんもうご存じですよね。
エポキシレジンの黄変予防と対策
黄変の原因が分かったところで、少しでも黄変を遅らせるためにできる予防と対策をご紹介します。
レジン自体の黄変防止成分有無は当然として、ほかに押さえたいポイントは以下の通り。
エポキシレジン黄変予防のために押さえたいポイント
・使用期限を守る
・液状のときはなるべく空気に触れないようにする
・二液を正確に計量する
・まぜ残しなく混合する
・添加物に注意する
・補色で着色する
・レジンをあぶり過ぎない
・レジンを重ねすぎない
・UVを避ける
なんだか当たり前に感じられた項目もありますか?
詳しく解説していきます。
使用期限を守る
古い硬化剤は長く空気にさらされる分、酸化が進みやすい=黄変しやすいので、使用期限を守りましょう。
多くのエポキシレジンは開封前や開封後の使用期限が設けられています。
例えばアート系レジンアメリカ最大手のアートレジンでは開封前で1年間、開封後6ヶ月です。
意外と短いですよね。
液状のときはなるべく空気に触れないようにする
大容量タイプの場合など、残量が少なくなってくると容器内で酸素や湿気を含む大量の空気に触れやすく、黄変しやすくなります。
速やかに使い切れない場合は、小さなサイズの容器に移し替えておくのが良いと思います。
容器は酸素遮断タイプがおすすめです。
ポリエチレン素材は酸素透過性が高いものが多いのでご注意ください。
二液を正確に計量する
主剤と硬化剤の量がズレればズレるほど、化学反応が起こらないままの黄変しやすい分子が、硬化後のレジンの中にたくさん存在しやすくなります。
レジンの種類によって混ぜる時の比率が体積(ml)だったり、重さ(g)だったりと違いがあるので、間違えないようご注意ください。
計量には小数点以下まで量れるデジタルスケールがおすすめです。
まぜ残しなく混合する
エポキシレジンに含まれる耐UV成分や安定剤は二液を混合して初めて効果を発揮するものがあります。
まぜ残しがある場合、硬化不良の原因になるだけでなく耐UV面でも効果が減少してしまうおそれがあるため、きっちり混合したいです。
とくに容器の底と側面はまぜ残しができやすい部分なので念入りに混ぜましょう。
添加物に注意する
黄変を早めやすい添加物を加える時は注意が必要です。
白い着色剤に含まれる顔料はチタニウムホワイトが1番強力でよく出回っていますが、それ以外にもいくつか種類があります。
黄変を遅らせたい時はジンクホワイトなど、チタニウムホワイト以外の白系着色剤もおすすめです。
オーシャンアートなどチタニウムホワイトの白顔料着色剤を使わざるを得ない場合、同じチタニウムホワイトでも着色剤の形態(ピグメント・ペースト・絵具・アルコールインクなど)やブランドによっても黄変具合に差があります。
とくにアクリル絵の具やアルコールインクの白は黄変が早い傾向があるため避けましょう。
補色で着色する
無色透明を保ちたいコーティングでは、黄色の補色(反対色)となる紫色やウルトラマリン系の青でわずかに着色しておくと、黄変を目立ちにくくできます。
レジンの中には元からそのような色が付いているものもありますよね。
ちなみに黄変してしまったレジンを作品に使いたい場合、濃いめに着色するレジンアートや濃い色合いの作品のコーティングであればあまり目立ちませんし、レジンを無駄にせず済みます。
レジンをあぶりすぎない
レジンの炙りすぎは気泡を消そうとがんばりすぎて起こる場合が多いですよね。
あぶりすぎを防ぐ、レジンの気泡を減らすためのポイントは3つ。
エポキシレジンの気泡を減らす3つのポイント
①ベースの処理を正しく行う
②脱泡性がよいレジンを選ぶ
③気泡が少なくなるよう調整する
詳しく解説していきます。
①ベースの下処理を正しく行う
レジンを掛けるベースの素材が木材、花、貝など空気を含むものの場合、素材の気泡止め作業が必要です。
そのままレジンをかけると、素材表面に気泡が引っかかったり、素材から空気が出てしまうことによって何度気泡を消しても後から後から気泡が浮いてくる状態になりやすいためです。
気泡止めにはシーラーを塗る、コーティングタイプなど薄付きになるレジンを一度かける、小さなものならUVレジンなどで空洞を埋めるなどの方法があります。
②脱泡性がよいレジンを選ぶ
基本的にレジンは粘度が低いほど気泡が抜けやすいです。
しかし高粘度なレジンでも気泡抜けがよいものはあり、そのタイプであれば硬化熱で粘度が下がるタイミングでうまく自己脱泡してくれます。
▽フローレスレジンもこの粘度の割に気泡抜け良好
レジンが劣化していたり粗悪な場合、たくさんの気泡が出てしまう現象もみられるのでご注意ください。
③気泡が少なくなるよう調整する
たとえ気泡抜けがよいレジンでも、調整の仕方を間違えるとたくさんの気泡が残ってしまいます。
気泡を少なく調整するポイントは以下の通りです。
温めることで粘度が下がり二液が混合しやすく、また混合後に気泡が浮きやすくなります。
とくに冬場は欠かせません。
方法は湯せん、保温庫、床暖房など何でも良いですが、容器は非耐熱性なことと、加熱温度にご注意ください。
加熱しすぎは熱暴走につながり危険です。
安全な温度はレジンによって違いますが、混合後40℃になるくらいならOKです。
シャカシャカ混ぜると気泡だらけになります。
ただし気泡だらけになっても挽回できます。
対処としては、
あたためて粘度を下げてから少し放置→多くの気泡が表面に浮上→集まった気泡部分をぬぐい取って除去
これで大部分を取りのぞけます。
作業に時間をかけすぎると、硬化に向けて徐々に増粘してしまい気泡が抜けにくくなります。
作業時間の目安はレジンによって違いますが、あたためた場合は増粘までの時間が短縮されるため、とくに手早くすませる必要があります。
また着色剤の種類によっても増粘が早くなるものがあるためレジンアートをする場合も注意が必要です。
エポキシレジンの基本的な性質を理解することが、気泡が少ないレジン液作り、そしてあぶりすぎ防止につながるということですね。
※話が広がりましたが、黄変防止策の大筋に戻ります!
レジンを重ねすぎない
これは直接的な解決方法ではないですが、レジンを何度もかけて厚さがあればそれだけ黄変が目立ちます。
黄色いフィルターが1枚2枚3枚…となってしまいますので、黄変を目立たせたくない作品の場合何層にもレジンを重ねることを避けるのもひとつの手です。
UVを避ける
紫外線を避けるためには直射日光だけでなく照り返しにも注意が必要です。
また蛍光灯からも紫外線は出ているので、アートを飾る場所には配慮が必要です。
作品の方にできることとしては、UVカットのトップコートを使うなどがありますが、レジンにすでに耐UV成分が含まれている場合に、それらを使ってどれくらい効果があるかはハテナです…
環境の方にできることとしては、大掛かりになりがちですが窓や照明にUVカットシートを施したり、UVカットカーテンを使うなどの方法があります。
ちなみに「遮光」と「UVカット」は別物なのでお間違えないようお願いします。
まとめ
レジンの黄変について原因と対策の仕方をご紹介しました。
理由を知っているとレジンの作業行程のやり方も変わるかと思います。
黄変を目立たせたくない作品の場合、扱いが少しデリケートになりますが、できたての美しさを長くキープするために可能な範囲で取り入れていただけたらと思います。
●アルコールインクアートはレジンコーティングが原因で変色する色も。防ぐ方法はこちらの記事