アルコールインクアートの紙について
アルコールインクアートに使われる紙としてはユポ・コーポレーションのユポが有名ですが、実は他メーカーも様々な原料と独自技術で作ったものを販売していて、沢山の種類があります。
今回は使える紙のいくつかをアルコールインクアート作家目線でご紹介します。
紙の種類
アルコールインクアートに向くのは基本的に耐水紙です。
耐水紙は「紙」とは付いていますが、その多くはパルプを主原料とする一般的な紙とは違って合成樹脂を原料とした樹脂素材のものや、紙をベースとして樹脂をコーティングしたのものなどです。
もともとは印刷業界で使われていて、いわゆるフィルムやシートも広く「紙」と呼ばれています。
アルコールインクアートに使う場合では、用紙ごとの素材やつくりによって描き味や色染み、熱による歪み、シワになりにくさなどが異なります。
紙によるインクの広がり・色染み比較
色々な紙にインクを一滴落としただけの様子です。
※ここに貼って気づきましたが、キャス”ト“コート紙です、すみません。
※NARAブラックはコピックの紫が目立たなかったのでカメンスカヤインク(不透明の顔料インク)にしています。
●インクの記事
↓↓↓カメンスカヤのことも書いています
紙によって円の広がり方が違いますよね。
ユポよりインクの動きをコントロールしやすい紙はたくさんあります。
こちらは色染みの様子です。
※小花を描いてから消したので変な模様になってます;
このように色の染み込みや定着性が違うので、コピックの色は紙によって多少色調が違って見えます。
色染みがあるタイプは作品にした時に思わぬニュアンスが出る感じがして、私は好きです。
それぞれの紙を詳しくみていきます。
各紙のご紹介と向くアート
ユポ
海外の方もアルコールインクアートで多く使用しているのがユポです。
主原料はポリプロピレン(PP)で、耐熱温度は60-100℃ほどのようです。
色々なサイズや入数で販売されていて手に入りやすいです。
●私が監修させていただいた用紙だとこちらです。
練習するとある程度ラインのデザインも描けます。
もやもやとしたニュアンス感のある作品が作りやすいです。
レーザーピーチ
白色ポリエチレンテレフタレート(PET)製で熱に強いです。
色がとても白く、シワができにくい特徴もあります。
インクが素直に広がる印象で使いやすい紙だと思います。
特に線が非常に出しやすく、極細ラインを連ねていくリップルズ(アゲートラインやツリーリング等とも呼ばれます)も描きやすいです。
●リップルズ(極細ラインが連なるデザイン)の描き方はこちら
●私が監修させていただいた用紙だとこちら
マットのタイプは表面が擦れると跡が付きやすいのでご注意下さい。
他に表面がグロス(光沢)加工のシリーズや裏面粘着タイプもあります。
●ラインを出す時はIPAがやりやすいです※ガスマスクが必要です。
クリスパー
発泡PET製でこちらも熱に強いです。
とても軽いのが特徴で、レーザーピーチよりお安いですが、取扱い店が少ないのが難点です。
書き味はレーザーピーチと似ています。
●私が監修させていただいた用紙だとこちら
●薄いタイプ
OM
ベルギーのメーカーさまのPETベースの耐水紙です。
●私が監修させていただいた用紙だとこちらです。
耐熱温度95℃でユポより白く、シワになりにくいです。
この紙は私が知る中で一番描きやすいです。
スルスルとインクが広がり、ぼかしがきれいに出ます。
そして花のようにふんわりとしたデザインや、大理石風など、ゴールドの縁どり線を出したいデザインにも向きます。
●大理石風デザインの描き方はこちら
プラ板
ポリスチレン(PS)製です。
実はプラ板にも描けます。
透明・白・その中間の色などがあり、100均で手軽に手に入ります。
160℃で縮むようですが、さらっと当てる描き方ならドライヤーの風で縮んだりはしませんでした。
全く染み込まずインクの乾きが遅めの印象です。
ちなみに、アルコールインクアートしたものをオーブンで縮ませることも可能です。
紐を通す穴を作りたければ縮ませる前にパンチなどで開けておきましょう。
オーブンに入れる時はインクの乗った面を上にして加熱するようにして下さいね。
キャストコート紙・フォト用紙
紙ベースにコーティングをしたタイプの中でも、高光沢の用紙です。
商品名でミラーコート紙とも呼ばれます。
こちらは熱に強いです。
紙っぽさが強く、薄いと裏抜けしますが、その分早くインクが掃けるためくっきりしたラインを残しやすい印象です。
光沢感
裏抜けの様子
この仲間で、フォトプリント用の高光沢タイプの紙も使用できます。
こちらも素直に反応してくれて描きやすいです。
L版などサイズが小さいと風で飛んだり反ったりしやすく、また指で押さえると熱いので、四隅をテープで留めるなどした方が良いです。
描いた後の紙面は、表面のコーティングにパキパキとヒビ割れが起きやすいものがあるので、その点ご留意下さい。
家電量販店のプリンター用紙コーナーにA3サイズまで豊富な品ぞろえがあります。
アルコールインクアートをちょっとだけ試してみたい方にも良いかもしれません。
一回きりで終わってしまっても残りはおうちフォトプリント用紙として普通に使えますしね。
またアートを飾る際に、写真サイズの紙ならそのままフォトフレームに入れられます。
お手頃で種類も豊富で選びやすいですね。
NARAペーパー
インドの合成紙メーカーさまの紙です。
何製かは不明です。熱には弱い印象です。
アルコールインクアート専用のラインナップがあり、もちろん白いペーパーもあります。
黒いものは厚さが一択で350μmのみです。
特徴として、インクが一切染み込みません。
そのためインク染みができないですし、1度描いたものをアルコールで拭けば跡を残さず消すことができます。
表面のつや消し具合が独特で、描き心地も少し変わっています。
ブラックの紙でしか表現できない絵もあると思いますし、面白いですよ。
⚫NARA Synthetic Paperさまwebショップ
まとめ
アルコールインクアートに使える紙の種類と、いくつかの紙についてご紹介しました。
私はニュアンス感を出したい時や、オールラウンドの練習にはユポを、
すっきりしたラインを際立たせたい作品ではレーザーピーチ等を、
薔薇や大理石風やふんわりしたデザインの作品ではシナップスOMを使う事が多いです。
最近ではアーティストさんが様々な紙を手に入れやすい量や価格でパッケージングして小売販売して下さっていたりします。
光沢感や紙の色味や書き味など、描きたい作品のデザインや雰囲気に合わせて選んでいけると良いですね。