木製パネルとゴールドの塗料・画材について
木製パネルの側面塗装については今までにやり方や塗料の選び方をご紹介してきました。
●下処理や塗り方
●塗料の選び方
今回は中でもゴールドの絵具(塗料)についてご紹介します。
ゴールドは個人的にこだわりが強くて、木製パネルの塗装だけでなく併せて作品にも使っていけたらと思い、比較品は塗料だけに絞らず画材も広く試してみました。
ゴールドと一口に言っても、赤金、青金、アンティークゴールドやシャンパンゴールドなど色味が様々ですよね。
さらに質感(輝き方)によっても印象は変わります。
粒子感があるきらきらしたゴールドや滑らかなゴールド、輝きが少ないタイプなど、似た色味でも質感の違いは作品の印象に影響します。
今回は塗装に使うことから遮蔽力(下の色が透けないか)にも注目してみました。
私が求めるゴールドを探した比較実験なので、皆さまが求めるゴールドと違うこともあるかと思いますが、自分が好きなゴールドがどんな色味なのか見つけたり、質感の違いを知って選ぶ際の手がかりにしてもらえたらと思います。
⚫金箔の下地はこちらの記事
試したもの①水性絵具(アクリル絵具)系
まずは扱いやすい水性タイプ(水で溶かして筆も水で洗えます)の絵具中心に比べました。
木材の方の下準備として、軽くヤスリがけした杉材の上下に、白のジェッソ(絵具を塗る前の下地のようなものです。絵具の発色を良くしたり、基材への食いつきをよくしたりします。)とブラックジェッソを下塗りしています。
真ん中は白木のままになっています。
絵具はいずれも一度塗りで試しました。
使用品
左から
●ターナーアクリルガッシュ <ゴールドオレンジ>
●リキテックスアクリリックソフト <イリディッセント アンティークゴールド>
●リキテックスプライム <アンティークゴールド>
●ターナーアクリルガッシュ <ゴールドライト>
●フォークアート トレジャーゴールド <ゴールド>
●デコアート エクストリームシーン <シャンパンゴールド>
色はパッケージとメーカーの画像で選びました。
ひとまとめにしていますが、ガッシュとアクリル絵具は性質が多少違います。
基本的にはガッシュは不透明でつや消しの仕上がり(ターナーのものは少しツヤがあります)、厚く重ねるとひび割れしやすいです。
トレジャーゴールドとエクストリームシーンはクラフト関連で欧米で人気の絵具です。
※ゴールド系の色だけ見つけられず、米Amazonで購入しました。
結果
●色味と透け具合
いずれも透けが目立ちますが、なかではトレジャーゴールド(左から2番目)が目立ちにくい印象です。
エクストリームシーンのシャンパンゴールドは予想よりシルバーっぽさが目立つ色味でした。
●輝き具合
輝きの面ではトレジャーゴールドが一番ギラギラしたメタリック感のある黄金色で、次いでエクストリームシーンが粒子感がありました。
透けのあるゴールドの使い方として、二度三度と塗り重ねるのももちろん有効ですが、下塗りで色を付けておくのもおすすめです。
白いジェッソにアクリル絵具を混ぜても良いですし、もともと色が付いているジェッソもあります。
●様々な色となじみやすいアースカラージェッソ(油絵の下塗りなど黄土色が基本です)
●ゴールドのジェッソ
余談ですが工芸で金箔を使用する時も、箔の下地には朱色や黄土色を使用して色調を深めます。(ちなみに金箔を貼る前の金閣寺は真っ黒な漆塗りです!)
手持ちの金色絵具の色調を少しだけ調節したい時などに試してみて下さいね。
試したもの②油性絵具ほか
遮蔽力を重視して選んだものです。
※私が明るくて渋みが少なめのアンティークゴールドが好きなので似た色調になっています。
木材は①と同じように処理しました。(ヤスリがけが甘かった…!)
絵具はいずれも一度塗です。
使用品
左から
●タカラ塗料 水性アクリルメタリックペイント アンティークゴールド
●ニッカー絵具 デザイナースカラー リッチゴールド(水性のポスターカラーです)
●ペベオ ギルディングワックス エンパイアゴールド(油性)
●松田油絵具 専門家用絵具 瓶入り ゴールド20g(粉末)、マツダック(油性)
二つを混ぜて使います。
[rakuten id=”artloco:10003750″ kw=”マツダ ゴールド 20g”]
●デーラー・ラウニー ゴールドフィンガー ソブリン(荘厳)ゴールド(油性)
こちらは額縁修復材です。布や指で塗りこみます。
●ジャカード ピニャータ リッチゴールド(油性)
<!>ニッカーのデザイナースカラーは乾いても非耐水性(水に溶けてしまう)な他、経年で剥落するおそれがあり木部にはあまり向かないそうです。
結果
●色味と透け具合
いずれも透けが目立ちにくく、下地の色の影響をほとんど受けません。
●輝き具合
タカラ塗料のアンティークゴールド以外、どれも光をしっかり反射します。
ですが、よく見ると粒子感が少しずつ違います。
実物だとピニャータゴールド(1番右)が最も粒子感がありギラギラとした輝き、タカラ塗料のアンティークゴールド(1番左)とペベオのギルディングワックス(左から3番目)がそれに次ぐ粒子感、松田油絵具のゴールドとゴールドフィンガーは非常になめらかなゴールドです。
●ゴールドフィンガーは本当にゴールドのフィンガーになります笑 色の選択間違えた…
油絵具を使用する際の注意点
下塗りについて
油性タイプの絵具を木部に使用する場合は、下塗りをするのが望ましいそうです。
直接塗布するとメディウム(絵具の中に含まれる接着成分や油分など)が木材に吸収されて、色調を落としたり劣化を早めたりする可能性があるためです。
今回は絵画としてでなく、あくまでパネル側面を塗る目的なので、そこまで厳密にしなくても良いかなと考えています。
筆のお手入れ
塗った後の筆の手入れについては専用の筆洗油を使用するのが望ましいです。
●クサカベ ブラシクリーナー
他の方法として、絵具をよく拭き取ったあと無水エタノール(アルコールインクアートをする方はお持ちですよね)などで洗い溶かして、石鹸で綺麗にすることも可能ではあります。
※筆を傷めやすい点にご注意下さい
水で洗うことは避けて下さいね。
重ね塗り
油絵具の上にアクリル絵具を重ねることはできません。
アクリル絵具が剥がれてきてしまいます。
やろうと思う方が少ない使い方だとは思いますがご参考までに。
まとめ
水性絵具類ではアクリル絵具やガッシュは透けが目立つ結果となり、重ね塗りや下塗りの色の工夫が必要だと感じました。
輝き具合では大差ない中、トレジャーゴールドとエクストリームシーンはキラキラした粒子感がありました。
油性タイプではピニャータのリッチゴールドが一番粒子感があり、もっともなめらかでやわらかい光沢が出たのは松田油絵具のゴールドとラウニーのゴールドフィンガーでした。
いずれも油性なので使用後はひと手間必要です。
最後に
少し偏りのあるチョイスだったでしょうか。
好みのアンティークゴールド色と輝き具合だったことから、私は松田油絵具のゴールドを使用しようと思います。
ブレンドする必要がありますが、粉の方に液体を少しずつ加える(筆で塗り伸ばしやすいくらいに)だけで難しくないですし、お値段もそこまで高くないです。
皆さまも理想の金色を見つけてみませんか?
※次回はゴールドのラインを引く時の画材をご紹介したいと思います!